『親密な関係』



「僕にはね、必要なんだよ…」

マイケルは、隣に立っている男にそう言うと、照れるように柔らかに笑った。
そして私の体を身体を強引に引き寄せると身体を密着させる。

マイケルの顔が目の前に来たのを良いことに、私は彼の綺麗な瞳を、見つめ続けていた。
その瞳の奥から彼の感情を読み取ろうと必死になりながら…。

「はは、そうだな、確かに君には必要だ。」

そんな私達の様子をしばらく見ていた男はそう呟くと、その場を去っていった。

マイケルは、フゥと、軽くため息を着くと、私から身体を引き離した。

私にはまだ彼のぬくもりが残っているのか、先程までとは比べようの無いほど身体が熱くなっているのが自分でも感じられた。
私ったらこんな事…毎日のことなのに…。。。

私達がこういう関係になってもう何年がたつのだろうか。
私は気付けば自然と出会ったときの事を思い出していた。

今でも忘れない。
初めてマイケルに出会あった時のことを。
彼と目があったとき、私達はお互いがひかれあったのが確かにわかった。

あの場には沢山の女性がいたし、それまで私はその中の一人に過ぎなかった。

しかし沢山の女性の一人だった私に、マイケルは何の迷いも見せないかのように手を差し伸べてくれた。

「やっと見つけたよ・・・。」
その時、マイケルはそう口にしたのを 私はまだ昨日の事のように覚えている。
優しく微笑みながら…。
とても、とても澄んだ瞳の人だと思った。

そして私達は初めて会った日に肌を重ね合ったのだ。


だけど…。。
私はチラリとマイケルを見上げた。

私は知っているのよ。
あなたが最近、他の女性とも関係があることを…。
それもその事を隠そうとはせず、人前で彼女と堂々と居ることも。

私が何も感じないと思ってる?
嫉妬しないとでも?
どうして私だけじゃいけないの?

すっかりマイケルの温もりが消えてしまった身体がより一層切なさを増幅させるかのようだ。

私が何も言えないのをマイケルは知っているから…。

マイケルはそんな私の思いなど知るよしもなく、のんびりとした様子で、室内の本棚に向かって、あれこれ本を物色していた。

ほらね…わかってるわ、私。
今から読書でしょう?
あなたが本を読むとき必ず彼女を必要とすることを…。

マイケルは鼻歌を歌いながらご機嫌な様子で一冊の本を手に取るとソファーに腰を下ろした。

やめて…

彼女を必要としないで!!
私頑張るから…!!

心で強く願ったことも虚しく、マイケルは彼女を連れてくると、私に触れるのと同じように彼女の身体を引き寄せると、彼女の体を顔へと密着させた。
やめてーーー!!!
老眼鏡をかけちゃいやぁぁぁ!!!
私は泣きたくなる気持ちを必死で抑えながら心で叫び続けた。

いつからだろうか、彼女が突然現われたのは。
それまでは私は常にマイケルと一緒に過ごしていたのに。

シャイなマイケルは常に私を必要としてくれていた。
私もそれにこたえるために 全力で彼を守ってきたつもりだ。

ある時はハイエナのように群がるパパラッチから。
またある時は、真夏の突き刺すような強い日差しから…私はマイケルを守り続けてきた。
私はいつでもマイケルの傍にいたのに。。。

時折、老眼鏡の身体を触りながら 読書に勤しむ姿のマイケルを私は見つめ続けた。
そんな透明の身体どこが良いっていうのだろうか。

早く私のこの黒光りした身体に触れてほしいのに・・・・。
早く外に行きましょうよ。


ああ・・・・・・。
私はガックリと肩を落としたくなる気持ちで、目の前で堂々とマイケルが老眼鏡と肌を重ね合わせる光景をただボー然と見つめるしかないのだった。

≪END≫



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